第6章 ルーパサンガハヴィバーガ(物質の概要)
第1節 導入の偈文
エッターヴァター ヴィバッター ヒ サッパベーダッパヴァッティカー
チッタチェータスィカー ダンマー ルーパン ダーニ パヴッチャティー
サムッデーサ ヴィバーガ チャ サムッターナー カラーパトー
パヴァッティッカマトー チャー ティ パンチャダー タッタ サンガホー
これまで、チッタとチェータスィカについて、その種類、生じ方に沿って詳しく分析しました。ここではルーパ(物質)を取扱います。
ルーパ(物質)の概要を5通りの方法で分析します。数、種類、起源、グループ分け、生じ方と5つです。
第1節へのガイド
アビダンマッタサンガハ(アビダンマの概要)の最初の5章は、チッタを介した経験の様々な側面についての完璧な概要となっています。81種類ないし121種類のチッタ、52種類あるチェータスィカとそれが(チッタに)浸透する様子、認識過程ないし再生においてチッタが生じる様子、生存領域、カンマ(業)とその結果の分類について説明しています。
この冒頭の5章はパラマッタダンマ(究極の真理)の内、チッタとチェータスィカという二つの真理について詳細に分析しています。第6章では、アーチャリヤ・アヌルッダ尊者は第3番目の究極の真理であるルーパ(物質)について分析します。まず最初に物質的現象を分類しそれを数え上げます。その後、ルーパ(物質)を分類する際の原則、ルーパ(物質)が生じる際の原因ないし手段、ルーパ(物質)のグループ分け、ルーパ(物質)の生じ方について説明します。そして最後に、この章のまとめを示した上で、第4番目の究極の真理、条件づけられることがないニッバーナ(涅槃)について簡単に触れています。
パーリ語のルーパ(物質)の由来はルッパティという言葉であると説明されています。ルッパティの意味は「変形するもの、阻害されるもの、打たれるもの、抑圧されるもの、壊れるもの」1です。物質がルーパと呼ばれるのは、暑さ、寒さなどのありとあらゆる物質的条件により変化し、また他の物質を変化させるからだと注釈書に述べられていいます2。
ブッダご自身も、物質ないし物質としての形について説明する時に、「比丘たちよ、なぜルーパ(物質)と呼ばれるのでしょうか。それは変形してしまう(ルッパティ)からです。それでは何によって変形してしまうのでしょうか。寒さ、暑さ、飢え、渇き、ハエ、蚊、風、日差し、地を這う虫などです。」と説かれています(S.22:79/iii,86)。
ルーパ(物質)にはどのようなものがあるか(ルーパサムッデーサ)
第2節 概要:マハーブータ(四つの根本要素)とそれから派生する物質
チャッターリ マハーブーターニ チャトゥンナン チャ マハーブーターナン
ウパーダーヤ ルーパン ティ ドゥヴィダン ペータン ルーパン
エーカーダサヴィデーナ サンガハン ガッチャティ
物質は二つに分かれます。すなわち四つの根本的な物質(マハーブータ)と、四つの根本的な物質(マハーブータ)から派生する物質的現象です。この二つは11の範疇に分類されます。
第2節へのガイド
物質は二つに分かれます:アビダンマでは物質的現象は28種類あるとされています。そして二つの大きな範疇に分けられます。四つの根本的な物質(マハーブータ)と、その四つの根本的な物質((マハーブータ)から派生する物質的現象の二つです。四つの根本的な物質((マハーブータ)とは地、水、火、風の四つです。この四つは物質の根源的な構成要素で分けることが出来ません。様々な組み合わせにより、極めて微細な物質から大きな山に至るまで全ての物質を作り出します。四つの根本的な物質(マハーブータ)から派生する物質(ウパーダーヤルーパ)は四つの根本的な物質(マハーブータ)に由来し、あるいはそれに依存して生じます。全部で28種類あります。四つの根本要素(マハーブータ)は地面に、そして四つの根本的な物質(マハーブータ)から派生する物質(ウパーダーヤルーパ)は地面から生える木や茂みに例えることが出来ます。28種類あるこれらの物質的現象は全て11の範疇に分けることが出来ます。そのうちの7つは具体的な物質(ニッパンナルーパ)と呼ばれます。何故ならそれらは固有の性質を持ち、瞑想対象にしたり、洞察を通して理解したりするのに適しているからです。残りの4つはやや抽象的であり、具体的ではない物質(アニッパンナルーパ)と呼ばれます。(表6.1参照)
第3節 詳細:具体的な物質(ニッパンナルーパ)
カタン
(1) パタヴィーダートゥ アポーダートゥ テージョーダートゥ ヴァヨーダートゥ
ブータルーパンナーマ
(2) チャック ソータン ガーナン ジヴァー カーヨー パサーダルーパン ナーマ
(3) ルーパン サッドー ガンドー ラソー アーポーダートゥヴァッジタン
ブータッタヤー サンカータン ポッタバン ゴーチャラルーパン ナーマ
(4) イッタッタン プリサッタン バーヴァルーパン ナーマ
(5) ハダヤヴァットゥ ハダヤルーパン ナーマ
(6) ジーヴィティンドゥリヤン ジーヴィタルーパン ナーマ
(7) カバリーカーロー アーハーロー アーハーラルーパン ナーマ
どのように分類されるのでしょうか。
(1) ブータルーパ(四つの根本的な物質的現象)とはパタヴィー(地)、アーポー(水)、テージョー(火)、ヴァーヨー(風)の四つです。
(2) パサーダルーパ(感覚を感じ取る物質的現象)はチャック(眼)、ソータ(耳)、ガーナ(鼻)、ジヴァー(舌)、カーヤ(身体)の五つです。
(3) ゴーチャラルーパ(感覚の対象となる物質的現象)はルーパ(眼に見える形)、サッダ(音)、ガンダ(臭い)、ラサ(味)、ポッタバ(接触感)の五つです。ポッタバ(接触感)はブータルーパ(四つの根本的な物質的現象)のうちアーポー(水)は含まれず、パタヴィー(地)、テージョー(火)、ヴァーヨー(風)の3つだけで構成されます。
(4) バーヴァルーパ(性に関わる物質的現象)はイッタッタ(女性)、プリサッタ(男性)の二つです。
(5) ハダヤルーパ(心臓という物質的現象)はハダヤヴァットゥ(心臓というチッタを支える物質)です。
(6) ジーヴィタルーパ(命という物質的現象)はジーヴィティンドゥリヤ(生命力の根源)です。
(7) アーハーラルーパ(栄養という物質的現象)はカバリーカーロー アーハーラ(食べられる栄養)です。
イティ チャ アッターラサヴィダン ペータン サッバーヴァルーパン
サラッカナルーパン ニッパンナルーパン ルーパルーパン サンマサナルーパン
ティ チャ サンガハン ガッチャティ
これら18種類の物質的現象は以下のようにグループ分けされます。サッバーヴァルーパ(固有の内在する性質を持つ物質)、サラッカナルーパ(現実的な性質を持つ物質)、ニッパンナルーパ(具体的な物質)、ルーパルーパ(物質的物質)、サンマサナルーパ(洞察により把握される物質)です。
第3節へのガイド
(1)パタヴィーダートゥ(地の要素):4つの根本的な物質(マハーブータ)は、本来備わった独自の性質を持っている(アッタノー サバーヴァン ダーレンティ)という意味でダートゥ(要素)と呼ばれます。パタヴィーダートゥ(地の要素)は同時に存在する物質的現象の土台を支えることからそのように呼ばれています。パタヴィーという単語は「広げる、伸ばす」という語幹に由来しています。従ってパタヴィーダートゥ(地の要素)は「伸展という原則」を代表しています。パタヴィーダートゥ(地の要素)は硬さという性質を持ち、他のダートゥ(根源的な要素)や、ダートゥ(根源的な要素)から派生する物質の土台としての機能を果たし、受けとめるという形で現われます3。直近の原因は他の3つの根本的な物質(マハーブータ)です。硬さ、柔らかさは触角を通して経験するパタヴィーダートゥ(地の要素)の一側面です。
アーポーダートゥ(水の要素):アーポーダートゥ(水の要素)ないし流動性は、異なる物質粒子を結合させ、ばらばらにならないようにする物質的な要素です。その性質はしたたる、ないし流れ出ることです。そしてその機能は、異なる物質が共存をしている状態を強化することです。物質的な現象同士をまとめあげ結びつけるという形で現れます。その直近の原因は他の3つの根本的な物質(マハーブータ)です。アーポーダートゥ(水の要素)は他の3つの根本的な物質(マハーブータ)と異なり、身体で感じ取る事が出来ず、観察された物質同士が結合する様子から推測して知ることができる、アビダンマではそのように説明しています。
テージョーダートゥ(火の要素)は熱という性質を持ち、その働きは他の物質敵現象を成熟させ、実を結ばせることです。持続的に柔らかさをもたらすという形で現れます。熱さも冷たさもテージョーダートゥ(火の要素)を経験した場合の一側面です。
ヴァーヨーダートゥ(水の要素)は動きと圧力を生み出す根本となります。その性質は膨張で、他の物質的な現象に動きをもたらします。他の場所への移動という形で現れ、その直近の原因は他の3つの根本的な物質(マハーブータ)です。触った時の圧迫感として経験されます。
(2)パサーダルーパ(感覚物質)は五つの感覚器官に存在する5種類の物質です。⁴感覚と、感覚を支える粗大な感覚器官は区別して理解する必要があります。私たちが習慣的に眼と呼んでいるのは、様々な現象が組み合わさった、眼という複合体(ササンバーラチャック)であるとアビダンマでは説明しています。その中の一つが網膜にあるチャックパサーダ(視覚物質)であり、光と色を感じ取って、チャックヴィンニャーナ(眼に視覚を感じたという意識)の物質的な基盤となり、またドゥヴァーラ(門)となります。ソータパサーダ(聴覚)は耳の穴の奥、微細な褐色の毛に囲まれた指サックのような構造の中にあります。音を感じ取り、ソータヴィンニャーナ(耳に聴覚を感じたという意識)の物質的な基盤となり、またドゥヴァーラ(門)となるのは感覚物質です。ガーナパサーダ(嗅覚)は鼻の孔の内側、にあり、臭いを感じ取る物質です。ジヴァーパサーダ(味覚)は舌全体に広がり、味を感じ取ります。そして(カーヤパサーダ)身体感覚は綿の布に染み込む水のように身体全体に広がり、触覚を感じ取ります。眼の特徴は視覚情報受け取るための基本要素の感受性です。あるいは見たいという願望から生じる基本要素の感受性です。その働きは視覚情報を対象として取り込むことです。そして、チャックヴィンニャーナ(眼に視覚を感じたという意識)の土台として現れます。その直近の原因は、見たいという願望から生じるカンマ(業)によって作られる基本要素です。耳、鼻、舌、身体という残りの4つの感覚物質についても、必要に応じて語句を入れ替えて、同じように理解してください。
(3)ゴーチャラルーパ(感覚の対象としての物質的現象)は対応する5つの感覚対象で、対応する感覚意識を支えます。触覚をもたらす物質は3つの根源的な要素、すなわち硬さや柔らかさとして経験されるパタヴィーダートゥ(地の要素)、熱さ、冷たさとして経験されるテージョーダートゥ(火の要素)、圧として経験されるヴァーヨーダートゥ(風の要素)の3つで構成されることに注意してください。アビダンマによれば、結合の基本であるアーポーダートゥ(水の要素)は触覚情報には含まれないとされています。目に見える形などの他の4つの感覚対象はマハーブータ(根源的な要素)から派生するタイプの物質です。まとめると、感覚の対象となる物質的現象は感覚基盤に衝突するという性質を持っています。その働きはヴィンニャーナ(感覚を感じたという意識)の対象になることです。そして、それぞれのヴィンニャーナに訴えかけるという形で現れます。その直近の原因は4つのマハーブータ(根源的な要素)です。
(4)バーヴァルーパ(性という物質的現象)は、男性、女性という二つのです。その性質は、それぞれ男という性、女という性です。その機能は男性、女性としての表現型を作り出すことです。そして、姿形、兆候、職業、振る舞いの理由として現れます。言い換えれば、体の性的な構造、女性、男性としての特徴は、典型的な女性、男性の仕事、典型的な女性、男性としての行動様式の理由です。
(5)ハダヤルーパ(心臓という物質的現象):ハダヤヴァットゥ(心臓という、チッタを
を支える物質敵的基盤については第三章、第20節をご覧下さい。ハダヤヴァットゥは、マノーダートゥ(精神現象の基本要素)とマノーヴィンニャーナダートゥ(イメージなどの精神現象を感じたという意識の基本要素)の物質的な支えとなる、という特徴があります(第三章、第21節参照)。その機能はこの二つの要素を支持することです。そしてこの二つの要素を運ぶという形で現れます。心臓の中にある血液に依存し、四つのマハーブータの補助を受け、ジーヴィティンドゥリヤ(生命力)により維持されます。
(6)ジーヴィティンドゥリヤ(生命力)は、精神的な生命力に対応する、7つの普遍的なチェータスィカの一つです。能力と呼ばれるのは付随する要素に支配的な影響を与えるからです。ジーヴィティンドゥリヤ(生命力)は共存する物質が現れた瞬間にそれを維持するという性質があります。ジーヴィティンドゥリヤの機能は、そうした物質を生じさせることです。そしてそうした物質の存在を確かなものにするという形で現れます。その直近の原因は維持されるべき四つのマハーブータ(物質の基本要素)です。
(7)カバリーカーラーハーラ(食物)には栄養素(オージャー)、つまり食物に含まれる栄養物質という性質があります。その機能は、物質としての身体を維持することです。身体を強化するという形で現れます。その直近の原因は栄養物質の基礎となる食物です。
これら18種類の物質的現象は:ここで列記した18種類の物質的現象は、サバーヴァルーパ(本来備わった性質を持つ物質)として、一つのグループにまとめることが出来ます。なぜなら、例えばパタヴィーダートゥ(地の要素)の硬さのようにそれぞれが異なる固有の性質を持っているからです。また、サラッカナルーパ(物事の真の性質を持つ物質)としてまとめることも出来ます。何故なら全てがアニッチャ(無常)、ドゥッカ(苦)、アナッタ(無我)という普遍的な性質を持っているからです。さらに、ニッパンナルーパ(具体的な物質としてまとめることも出来ます。何故ならカンマ(業)などの条件により直接作られるからです。そして、ルーパルーパ(物質的な物質)としてまとめることが出来ます。なぜなら形が変わるという物質の基本的な性質を持っているからです。最後に、サンマサナルーパ(洞察により把握される物質)としてまとめることが出来ます。何故ならアニッチャ(無常)、ドゥッカ(苦)、アナッタ(無我)を観察するという洞察瞑想の対象となるからです。
第4節 アニッパンナルーパ(抽象的な物質)
(8) アーカーサダートゥ パリッチェーダルーパン ナーマ
(9) カーヤヴィンニャーナッティ ヴァチーヴィンニャーナッティ
ヴィンニャーナッティルーパン ナーマ
(10)ルーパッサ ラフター ムドゥター カンマンニャータ
ヴィンニャーナッティドゥヴァヤン ヴィカーラルーパン ナーマ
(11)ルーパッサ ウパチャヨー サンタティ ジャラター アニッチャター
ラッカナルーパン ナーマ ジャーティルーパン エーヴァ パネーッタ
ウパチャヤサンタティ ナーメーナ パヴッチャティ
(8) パリッチェーダルーパ(物質の限界を定める物質的現象):アーカーサダートゥ(空間という要素)。
(9) ヴィンニャーナッティルーパ(暗示・ほのめかしいう現象):カーヤヴィンニャーナッティ(身体を使った暗示・ほのめかし)とヴァチーヴィンニャーナッティ(言葉を使った暗示・ほのめかし)。
(10)ヴィカーラルーパ(物質の変化を表す物質的現象):ラフター(軽さ)・ムドゥター(可塑性)・カンマンニャータ(扱いやすさ)、そして二つのヴィンニャーナッティ(暗示・ほのめかし)。
(11)ラッカナルーパ(物質の性質を表す物質的現象):物質のウパチャヤ(産生)・サンタティ(持続)・ジャラター(崩壊)とアニッチャター(無常)です。ここで使っているウパチャヤ(産生)とサンタティ(持続)はジャーティー(誕生)という物質的現象を意味します。
第4節へのガイド
抽象的な物質:(8)~(11)に属する物質は、物質を作り出す4つの主な原因(第9節参照)から直接生じるわけではないことから、アニッパンナルーパ(抽象的な物質)と呼ばれます。そして、ニッパンナルーパ(具体的な物質)の様相ないし特質として存在します。このため、このグループの物質的現象はパラマッタダンマ(究極の真理)には含まれません。
(8)アーカーサダートゥ(空間という要素):アビダンマでは空間を単なる幾何学的な広がりではなく、対象や物質的現象の範囲を定め、それぞれを分ける何もない領域として捉えます。空間によりそれぞれの物質的現象を別のものとして認識することが出来ます。アーカーサダートゥ(空間という要素)の性質は物質の範囲を定めることです。その機能は物質の境界を示すことです。物質的現象の範囲は限定される、あるいは間隙、隙間という形で現れます。そしてその直近の原因は、範囲が定められた物質です。
(9)ヴィンニャーナッティルーパ(暗示、ほのめかしという物質的現象):人はヴィンニャーナッティ(暗示、ほのめかし)により、自分の思考、感情、態度を相手に伝えます。暗示・ほのめかしには身体を使う場合と、言葉を使う場合の2種類があります。身体を使った暗示・ほのめかしは、チッタに由来するヴァーヨーダートゥ(風の要素)の特殊な修飾で、それにより身体を動かして、自分の意図を示します。言葉を使った暗示・ほのめかしは、チッタに由来するパタヴィーダートゥ(地の要素)の特殊な修飾で、それにより言葉を発して、自分の意図を示します。両方とも自分の意図を表すという働きを持ちます。そして、それぞれ身体動作、言語表現の原因として現れます。それぞれの直近の原因は、チッタから生じたヴァーヨーダートゥ(風の要素)、パタヴィーダートゥ(地の要素)です。
(10) ヴィカーラルーパ(物質の変化を表す物質的現象):このカテゴリーには具体的に作られた物質の特殊な様相ないし現れ方が含まれます。二種類のヴィンニャーナッティ(暗示・ほのめかし)の他に、ラフター(軽さ)、ムドゥター(可塑性)、カンマンニャター(扱いの容易さ)という三つの物質的現象を含みます。
この三つの中で、ラフター(軽さ)は緩慢でないという性質を持ちます。その働きは物質の中にある重さを追い払うことです。軽くなるという形で現れます。その直近の原因は軽い物質です。
ムドゥター(可塑性)は硬くないという性質です。その働きは物質から硬さを追い払うことです。どのような動きに対しても反発しないという形で現れます。その直近の原因は可塑性のある物質です。
カンマンニャター(扱いやすさ)は扱いが容易であるという、身体の動きに好都合な性質です。その働きは、扱いにくさを追い払うことです。弱さがないという形で現れます。その直近の原因は、扱いやすい物質です。
(11)ラッカナルーパ(物質的現象の性質):このカテゴリーには四つのタイプの物質的現象が含まれます。その中で、ウパチャヤ(産生)とサンタティ(持続)は創造すなわち、物質の出現ないし誕生(ジャーティー)を意味する言葉です。二つの言葉の違いは、ウパチャヤ(産生)の場合、物質的現象が現れる最初の時点、物質的現象の過程を準備し、立ち上げるのに対し、サンタティ(持続)の場合は同じ過程を通して繰り返し物質的現象を作り出します。例えば、妊娠の時点で身体、心臓、性がまとまって生じるのはウパチャヤ(産生)であり、それに続いて同じ物質的現象の組み合わせが生涯を通じて繰り返し生じるのがサンタティ(持続)です。
ウパチャヤ(産生)は準備するという性質があります。その働きは最初の時点で物質を出現させることです。物質的現象の過程を立ち上げるという形、ないし完成された状態として現れます。その直近の原因は作られる物質です。
サンタティ(持続)は発生するという性質があります。その働きは繋ぎ止めることです。途切れないという形で現れます。その直近の原因は、繋ぎ止められる物質です。
ジャラター(崩壊)は物質的現象が成熟するないし老化するという性質を持ちます。その働きは物質的現象を終末へと導くことです。存在を継続しながら新しさが失われるという形で現れます。その直近の原因は、崩壊している物質です。
アニッチャター(無常)は、物質的現象の完全な壊滅という性質を持ちます。その働きは物質的現象を消褪させることです。破壊と消滅という形で現れます。その直近の原因は、完全に壊れつつある物質です。
第5節 28種類の物質
イティ エーカーダサヴィダン ペータン ルーパン アッタヴィーサティヴィダン
ホーティ サルーパヴァセーナ カタン
ブータッパサーダヴィサヤー バヴォー ハダヤン イッチャピ
ジーヴィターハーラルーペーヒ アッターラサヴィダン タター
パリッチェードー チャ ヴィンニャッティ ヴィカーロー
ラッカナン ティ チャ アニッパンナー ダサ チャー ティ
アッタヴィーサヴィダン バヴェー
アヤン エッタ ルーパサムッデーソー
このように、11種類の物質的現象はその特質に応じて28に分けて扱われます。どのようにして28に分類されるのでしょうか。
ニッパンナルーパ(具体的な物質)は、ブータルーパ(根本的な物質的現象=4)、パサーダルーパ(感覚に関連する物質的現象=5)、ゴーチャラルーパ(感覚の対象となる物質的現象=5)、バーヴァルーパ(性に関わる物質的現象)、ハダヤルーパ(心臓という物質的現象)、ジーヴィタルーパ(命という物質的現象)、アーハーラルーパ(栄養という物質的現象)の18種類となります。
アニッパンナルーパ(抽象的な物質)は、アーカーサダートゥ(空間という要素=1)、ヴィンニャーナッティルーパ(暗示、ほのめかしという物質的現象=2)、ヴィカーラルーパ(変わりやすい物質的現象=3)、ラッカナルーパ(物質的現象の性質=4) の10種類となります。
こうして全部で28種類となります。
ルーパヴィバーガ(物質の分類)
第6節 全体を1種類とする見方
サッバン チャ パネータン ルーパン アヘートゥカン サッパッチャヤン サーサヴァン
サンカタン ローキヤン カーマーヴァチャラン アナーランマナン アッパターバッハン
エーヴァー ティ エーカヴィダン ピ アッジャッティカバーヒラーディヴァーセーナ
バフダー ベーダン ガッチャティ
全ての物質は以下の点で一つの種類とみなされます。まずへートゥ(チッタを安定させる根)を持ちません(アヘートゥカ)。条件とともに生じます(サッパッチャヤ)。心の汚れの対象となります(サーサヴァ)。なぜなら、4つの心の汚れの対象になる可能性があるからです(第7章、第3節参照)。5 全てが条件付けられており(サンカタ)、涅槃を悟っていない普通の人たちの世界に属します(ローキヤ)。なぜなら、いかなる物質も執着の対象となる5つの塊(パンチャカンダ=ルーパ、ヴェーダナー、サンニャー、サンカーラ、ヴィンニャーナ)の世界を超越することが出来ないからです。全ての物質はカーマーヴァチャラ(感覚的な楽しみを追い求める意識の領域)に属します。ルーパブーミ(物質を対象にした禅定に関連する、微細な物質から成る生存領域)にも物質は存在しますが、その性質からカーマーヴァチャラに属します。何故なら、物質は官能的な渇愛の対象だからです。物質には対象がありません(アナーランマナ)。何故なら、精神現象と異なり、対象を知ることが出来ないからです。また、物質は捨て去る対象ではありません(アッパハータッバ)。何故なら、物質は4つのロークッタラマッガ(涅槃を悟った聖者の道の智慧)によって捨て去ることが出来ないからです。
第7節 二つに分類する見方
カタン
パサーダサンカタン パンチャヴィダン ピ アッジャッティッカルーパン ナーマ
イタラン バーヒラルーパン
パサーダハダヤサンカタン チャッビダン ピ ヴァットゥルーパン ナーマ
イタラン アヴァットゥルーパン
パサーダヴィンニャッティサンカタン サッタヴィダン ピ ドヴァーラルーパン
ナーマ イタラン アドゥヴァーラルーパン
パサーダバーヴァジーヴィタサンカータン アッタヴィダン ピ インドゥリヤルーパン
ナーマ イタラン アニンドゥリヤルーパン
どのように分類されるのでしょうか。
5種類の感覚物質と言う現象(パサーダサンカータ)は内部に属します(アッジャッティカルーパ)。残りは外部に属する物質(バーヒラルーパ)です。
5種類の感覚器官(パサーダサンカータ)と心臓(ハダヤサンカータ)、合わせて6種類はチッタの基盤となる物質的現象(ヴァットゥルーパ)です。残りはチッタの基盤とならない物質(アヴァットゥルーパ)です。
5種類の感覚器官(パサーダサンカータ)と、暗示を伝える2種類の媒体(ヴィンニャッティサンカータ)、合わせて7種類は門という物質的現象(ドゥヴァーラルーパ)です。残りは門とはならない物質(アドゥヴァーラルーパ)です。
5種類の感覚器官(パサーダサンカータ)と性(バーヴァサンカータ)、命(ジーヴィタサンカータ)、合わせて8種類は、能力のある物質的現象(インドゥリヤルーパ)です。残りは能力の無い物質的現象(アニンドゥリヤルーパ)です。
パサーダヴィサヤサンカータン ドゥヴァーダサヴィダン ピ オラーリカルーパン
サンティケー ルーパン サッパティガルーパン チャ イタラン スクマルーパン ドゥレー
ルーパン アッパティガルーパン チャ
カンマジャン ウパーディンナルーパン イタラン アヌーパディナルーパン
ルーパーヤタナン サニダッサナルーパン イタラン アニダッサナルーパン
5種類の感覚器官(パサーダサンカータ)と7種類の感覚対象(ヴィサヤサンカータ)、合わせて12種類は、粗大な物質的現象(オラリカルーパ)であり、近い物質的現象(サンティケー ルーパ)であり、(感覚器官に)衝突する物質的現象(サッパティガルーパン)です。残りは、微細な物質的現象(スクマルーパ)であり、遠い物質的現象(ドゥーレー ルーパ)であり、衝突しない物質的現象(アッパティガルーパ)です。
カンマ(業)から生じた物質的現象(カンマジャ)は執着の対象(ウパーディンナルーパ)となり、それ以外は執着の対象にはなりません(アヌパーディンナルーパ)です。
目に見える形という基盤(ルーパーヤタナ)は、目で見ることができ(サニダッサナルーパ)、それ以外は目で見ることができません(アニダッサナルーパ)。
チャッカーディドゥヴァヤン アサンタッパヴァセーナ ガーナーディッタヤン サンパッタヴァセーナー ティ パンチャヴィダン ピ ゴーチャラッガーヒカルーパン イタラン
アゴーチャラッガーヒカルーパン
ヴァンノー ガンドー ラソー オージャ ブータチャトゥッカン チャー ティ アッタヴィダン ピ アヴィニッボーガルーパン イタラン ヴィニッボーガルーパン
眼と耳(この二つは対象に直接触れることはありません)、そして鼻、舌、身体(この3つは対象に直接触れます)の5つは、対象を取る物質的現象(ゴーチャラッガーヒカルーパ)です。その他は対象を取らない物質的現象(アゴーチャラッガーヒカルーパ)です。
色(ヴァンナ)、臭い(ガンダ)、味(ラサ)、栄養素(オージャ)、そして4つの基本要素(ブータ)、この8種類は分けることが出来ない物質的現象(アヴィニッボーガルーパ)です。それ以外は分けることが出来ます(ヴィニッボーガルーパ)。
第7節へのガイド
内部(アッジャッティカ):「内部(アッジャッティカ)」と言う用語は、精神的現象の門となる5種類の感覚物質だけに使われる専門的な用語です。物質としての身体の中で生じる物質的現象は他にもありますが、この五つの感覚要素だけが「内部(アッジャッティカ)の」と呼ばれます。
ヴァットゥ(物質的な基盤):第3章、第20節を参照。
ドゥヴァーラ(門):5つの感覚的な物質的現象は認識の門、すなわちチッタとチェータスィカが対象に出会う媒体です。身体と言葉による暗示・ほのめかしは行為の門、すなわち身体の行為、言葉の行為のチャンネルです。
インドゥリヤ(能力):感覚は、それぞれの領域で支配的な力(インドゥリヤ)を発揮するためこのように呼ばれます。それぞれの感覚が、共存する物質的現象を支配し、見る、聞くなど特有の機能を果たします。性という能力(バーヴァインドゥリヤ)は男性、女性の特徴、特色を支配します。生命力(ジーヴィティンドゥリヤ)は、船をコントロールする航海士のように、共存する物質をコントロールします。
粗大な物質的現象(オラリカルーパ)、近い物質的現象(サンティケー ルーパ)、(感覚器官に)衝突する物質的現象(サッパティガルーパ):この3つの言葉は、専門的な意味で使われており、一般的な用法と混同しないように注意が必要です。感覚意識をもたらす物質的現象に限定して用いられます。対象の相対的な大きさや近さとは何の関係もありません。このような現象は12通りあります。5つの感覚器官と7つの感覚対象です。触覚の基盤は3つとして数えます。何故なら、3つの基本要素が含まれているからです。
感覚意識が生じる際、それに直接貢献しない物質的現象は実際の大きさと距離に関係なく、微細な物質的現象(スクマルーパ)、遠い物質的現象(ドゥーレー ルーパ)、衝突しない物質的現象(アッパティガルーパ)と呼ばれます。
ウパーディンナ(執着の対象となる):カンマ(業)から生じる18種類の物質はウパーディンナ(執着の対象となる)として知られています。何故なら、タンハー(渇愛)とディッティ(真理に合わない正しくない見解)により生じたカンマ(業)の結果として獲得したものだからです。カンマ(業)以外の原因で作られた物質は、執着の対象となりません(アヌパーディンナルーパ)。しかしながら、あまり専門的ではない、通常の意味では、身体を構成する有機物は全て「執着の対象となるもの」、そして無機物は「執着の対象ではないもの」として語られます。分類のために使われる他の用語と異なり、ウパーディンナルーパ(執着の対象となる物質)とアヌパーディンナルーパ(執着の対象とならない物質)は排他的に区分する分け方ではなく、重複する物があります。例えばカンマ(業)から生じる9種類の物質は他の原因で生じることがあります(第17節参照)。
眼と耳(この二つは対象に直接触れることはありません):アビダンマでは、眼と耳はそれぞれの対象に接触することはない(アサンパタ)とされています。何故なら、眼や耳がチッタの物質的基盤として機能する際には、その対象は接触することはありません。対照的に、他の3つの感覚器官はその対象に直接接するとされています。
対象を取る物質的現象(ゴーチャラッガーヒカルーパ): ゴーチャラッガーヒカというパーリ用語は、5つの感覚器官を比ゆ的に示しています。感覚器官が基盤となり、その補助のもとでチッタが生じます。しかし、感覚器官は文字通り解釈すれば物質であり、それ自体が対象を把握することは出来ません。実際に対象を認識するのは、感化器官を基盤とするヴィンニャーナ(感覚を感じたという意識)です。
分けることが出来ない物質的現象(アヴィニッボーガルーパ):4つの基本要素(マハーブータ)とそれに由来する4つの物質色、臭い、味、営養素は、分けることが出来ない物質的現象(アヴィニッボーガルーパ)として知られています。何故なら、それらは常に一体化しており、最も簡単なものから最も複雑な物まで全ての物質に存在します。それ以外の物質的現象は存在する場合と存在しない場合があるため、分けることが出来る、とみなされます。この8つの要素だけから成る物質のグループは(カラーパ)は、純粋に8つの要素から成る物質(スッダッタカ)ないし栄養素を8番目として持つグループ(オージャッタマカ)として知られています。
第8節 まとめ
イッチェーヴァン アッタヴィーサティ ヴィダン ピ チャ ヴィチャッカナ
アッジャッティカディベーデーナ ヴィバジャンティ ヤターラハン
アヤン エッタ ルーパヴィバーゴー
このように賢者は「内部の」などの分類法により28種類の物質を適切に分析しました。
これが物質の分類です。
第8節へのガイド
物質的現象の分類の模式図、発生様式、グループ分けについては章末の表6.3をご覧ください。
ルーパサムッターナ(物質の起源)
第9節 4つの発生様式
カンマン チッタン ウトゥ アーハーロー チャ ティ
チャッターリ ルーパサムッターナーニ ナーマ
物質的現象の生じ方には4通りあります。カンマ(業)、チッタ、ウトゥ(季節)、アーハーラ(栄養)です。
第10節 発生様式としてのカンマ(業)
タター カーマーヴァチャラン ルーパーヴァチャラン チャー ティ パンチャヴィーサティヴィダン ピ クサラークサラーカンマン アビサンカタン
アッジャッティカサンターネー カンマサムッターナルーパン パティサンディン
ウパーダーヤ カネー カネー サムッターペーティ
カーマーヴァチャラ(感覚的な楽しみを追い求める意識の領域)とルーパーヴァチャラ(物質を対象にした禅定に関連する意識の領域)に関わる、28種類のクサラカンマ(善業)、アクサラカンマ(不善業)が、チェータナー(意思)により条件づけられた、業から生じる物質的現象を、再生の時点から始まり瞬間から瞬間へと、自分の内部に作り出します。
第10節へのガイド
カンマサムッターナルーパン(業から生じる物質):ここで使われているカンマ(業)は過去のクサラ(善なる)チッタないしアクサラ(不善な)チッタに伴なったチェータナー(意思)のことを指します。12種類のアクサラ(不善な)チッタ、8種類のマハークサラ(偉大なる、善なる)チッタ、5種類のルーパーヴァチャラクサラ(物質を対象にした禅定に関連する意識の領域における善なる)チッタに伴うチェータナー(意思)が物質を作り出す28種類のカンマ(業)です。アルーパーヴァチャラクサラ(物質でないものを対象にした禅定に関連する意識の領域における、善なる)チッタにともなう、チェータナー(意思)はアルーパブーミ(物質でないものを対象にした禅定に達した人が再生する、物質の無い生存領域)への再生をもたらすため、カンマ(業)から生じる物質は作りません。
カンマ(業)はチッタが存続する時間をさらに分けた時間区分、すなわち生起、存続、壊滅のどの時点においても物質的現象を作ります。パティサンディ(生存と次の生存を結びつけ、再生をもたらす)チッタが生起する時点から始まって、チュティ(死ぬ)チッタに先立つ最後の認識過程の17番目のチッタッカナ(チッタが生じてから滅するまでの時間)が終わるまで、生涯を通じて、物質を作り続けます。
18種類の物質的現象がカンマ(業)によって作られます。カンマ(業)により作られる9つのグループ(第17節参照)の内の、分けることが出来ない物質的現象(アヴィニッボーガルーパ)8種類、感覚物質(パサーダルーパ)5種類、性という能力(バーヴァインドゥリヤ)2種類、生命力(ジーヴィティンドゥリヤ)、心臓という基盤(ハダヤヴァットゥ)、そして空間(アーカーサ)の18種類です。そのうち、8つの能力とハダヤヴァットゥ(心臓という基盤)はカンマ(業)以外から生じることはありません。残りの9種類についてはカンマ(業)から生じるグループの一部として生じる場合はカンマ(業)から生じますが、それ以外の場合は他の原因から生じます。
第11節 物質の発生様式としてのチッタ
アルーパヴィパーカ ドゥヴィパンチャヴィンニャーナ ヴァッジタン パンチャサッタティヴィダン ピ チッタン チッタサムッターナルーパン パタマバヴァンガン
ウパーダーヤ ジャーヤンタン エーヴァ サムッターペーティ
アルーパヴィパーカ(物質でないものを対象にした禅定に関連する意識の領域における、業の結果として生じる)チッタ、ドゥヴィパンチャヴィンニャーナ(5つの感覚を感じたという意識、それぞれ2組みずつ)を除いた75種類のチッタがチッタサムッターナルーパ(チッタから生じる物質)を作ります。これは生涯最初のバヴァンガ(認識過程と次の認識過程との間にあり、生存を持続させるチッタ)から始まりますが、物質を作るのは生起する瞬間だけです。
タッタ アッパナージャヴァナン イリヤーパタン ピ サンナーメーティ ヴォッタッパナカーマーヴァチャラジャヴァナーヴィンニャー パナ ヴィンニャッティン ピ
サムッターペーンティ ソーマナッサジャヴァナーニ パネーッタ テーラサ ハサナン ピ
ジャネーンティ
没入状態におけるジャヴァナもまた姿勢を維持します。しかし、ヴォッタッパナ(対象を決定する)チッタ、カーマーヴァチャラ(感覚的な楽しみを追い求める意識の領域)におけるジャヴァナ、アビンニャー(禅定に熟達した瞑想者が得る五つの特別な能力という)チッタもまた(身体ないし言葉を使った)8また、ソーマナッサ(精神的な喜び)を伴う13種類のジャヴァナは微笑みを作り出します。
第11節へのガイド
チッタサムッターナルーパ(チッタから生じる物質):パティサンディ(生存と次の生存を結び付け、新しい生存をもたらす)チッタの直後のバヴァンガ(認識過程と次の認識過程の間にあり、生存を持続させる)チッタが生起する瞬間から、チッタサムッターナルーパ(チッタから生じる物質)の産生が始まります。パティサンディ(生存と次の生存を結び付け、新しい生存をもたらす)チッタ自体はチッタサムッターナルーパ(チッタから生じる物質)を作りません。何故なら、再生の瞬間に生じる物質はカンマ(業)により作り出されるからです。またパティサンディ(生存と次の生存を結び付け、新しい生存をもたらす)チッタはその生存にとっては最初のチッタだからです。10通りあるヴィンニャーナ(感覚を感じたという意識)にはチッタサムッターナルーパ(チッタから生じる物質)を作り出す力はありません。また、4つのアルーパヴィパーカ(物質ではないものを対象にした禅定に達した人が再生する物質の無い生存領域における、業の結果として生じる)チッタもチッタサムッターナルーパ(チッタから生じる物質)を作りません。何故ならアルーパブーミ(物質ではないものを対象にした禅定に達した人が再生する物質の無い生存領域)にのみ生じるからです。注釈書によれば、精神的現象は(生起、存続、消滅という三つの相のうち)生起の相が最も強く、物質的現象は存続の相が最も強いとされています。このためチッタがチッタサムッターナルーパ(チッタから生じる物質)を作るのは生起の相だけであり、存続、消滅の相で物質を作ることはありません。
没入状態におけるジャヴァナ:身体の姿勢を保持するのはチッタの状態の働きによるものです。26種類の没入状態のジャヴァナはごくわずかながらこの働きを果たし、座る、歩く、立つという身体の姿勢を維持します。ここで述べられている他の32種類のチッタ、すなわちヴォッタッパナ(対象を決定する)チッタ、カーマーヴァチャラ(感覚的な楽しみを追い求める意識の領域)におけるジャヴァナ、アビンニャー(禅定に熟達した瞑想者が得る五つの特別な能力という)チッタは姿勢を保持するだけでなく、積極的に暗示・ほのめかしを起こさせます。
13種類のジャヴァナは微笑みを作り出します:プトゥッジャナ(涅槃を悟っていない普通の人たち)が微笑んだり、笑ったりする場合は4種類あるソーマナッササハガタローバムーラ(精神的な楽しみを伴う、欲というチッタを安定させる根を持つ)チッタのいずれか、あるいは4種類あるソーマナッササハガタマハークサラ(精神的な喜びを伴う、善業を作る、偉大なる)チッタのいずれかによります。セーッカ(涅槃を悟り、輪廻からの解脱を目指して修行中の聖者たち)は以上の8つからディッティガタサンパユッタ(真理にそぐわない、誤った見解が付随する)チッタ2種類を除いた6種類のチッタにより微笑みを作り出します。アラハッタ(最終的な悟りを得て、輪廻からの解脱を果たした聖者)の場合は、4種類のソーマナッササハガタマハーキリヤ(精神的な楽しみを伴う、偉大なる、機能だけの)チッタとアヘートゥカハサナ(チッタを安定させる根を持たない、微笑みを作り出す)チッタ合わせて5種類のいずれかにより微笑みます。異なる種類のチッタが作り出す様々な物質的現象については表6.2をご覧ください。
第12節 物質の発生様式としての温度
スィートゥンホートゥサマンニャーター テージョーダートゥ ティティパッター ヴァ
ウトゥサムッパータルーパン アッジャッタン チャ バビッダー チャ ヤターラハン
サムッターペーティ
テージョーダートゥ(火の要素)は冷たさ熱さの双方を含み、存続の段階に達すると、状況に応じて内部、ないし外部にウトゥサムッパータルーパ(温度から生じる物質的現象)を作り出します。
第12節へのガイド
ウトゥサムッパータルーパ(温度から生じる物質的現象):パティサンディ(生存と次の生存を結び付け、再生をもたらす)チッタが生じて、その存続の相に達した時点を開始点として、カンマ(業)から生じた物質のグループの一部である内部のテージョーダートゥ(火の要素)が外部のテージョーダートゥ(火の要素)と結びついて、ウトゥサムッパータルーパ(温度から生じる物質的現象)を作り始めます。それ以降、全ての種類の原因により生じた物質の中のテージョーダートゥ(火の要素)が生涯にわたりウトゥサムッパータルーパ(温度から生じる物質的現象)を作り続けます。外部では、温度ないしテージョーダートゥ(火の要素)は気候変動や地質の変化など無機的な物質的現象も作ります。
第13節 発生様式としての栄養
オージャーサンカートー アーハーロー アーハーラサムッターナルーパン アッジョーハラナカーレー ターナッパットー サムッター ペーティ
基本的な営養素であるアーハーラサが存続の段階に達すると、栄養素を飲んだ時にその栄養から生じる物質(アーハーラサムッターナルーパ)を作り出します。
第13節へのガイド
栄養から生じる物質(アーハーラサムッターナルーパ):内部の栄養素は外部からの栄養素に支えられ、それを飲んだ瞬間から始まり、存続の相において物質的現象を作り出します。栄養から生じる物質の一群の中で、存続の相に達した営養素が8つの純粋な現象を作り出します。そしてその8つの中の営養素がさらに8つずつの現象を作り出します。このように8つの現象が派生する連鎖が10から12回繰り返されます。妊娠中の母親が摂取した栄養は胎児の身体に浸透し、その胎児に物質的現象を作り出します。身体の表面に塗布した栄養さえも物質的現象を作り出すと言われています。他の3つの原因(カンマ=業、チッタ、ウトゥ=温度)から生じた内部のグループに属する営養素もまた同じように8つずつの現象を連鎖的に作り出します。摂取した栄養は最長で7日まで身体を支えます。
第14節 起源による分析
タッタ ハダヤインドゥリヤルーパーニ カンマジャーネーヴァ
ヴィンニャッティドゥヴァヤン チッタジャン エーヴァ サッドー チットートゥジョー
ラフターディッタヤン ウトゥチッターハーレーヒ サンボーティ
アヴィニッボーガルーパーニ チェーヴァ アーカーサダートゥ チャ チャトゥーヒ
サンブーターニ ラッカナルーパーニ ナ クトーチ ジャヤンティ
ハダヤ(心臓)と(8つの)インドゥリヤルーパ(器官)はカンマ(業)から生じます。2つのヴィンニャッティ(ほのめかし・暗示)はチッタのみから生じます。サッダ(音)はチッタトとウトュ(温度)から生じます。)はウトゥ(温度)、チッタ、アーハーラ(栄養)から生じます。アヴィニッボーガルーパ(不可分の物質=地・水・火・風・色・臭い・味・栄養素)とアーカーサダートゥ(空間という要素)は4つの原因(業、チッタ、温度、栄養)のいずれからも生じます。ラッカナルーパ(生起、存続、崩壊、無常)は四つのいずれも原因にはなりません。
第14節へのガイド
感情などを表現する音はチッタから生じます。そうでない音はウトゥ(温度)から生じます。ラフター(軽さ)、ムドゥター(身体ないし心が柔軟になった状態)、カンマンニャター(ブッダの教えを受け入れやすくなった状態)は、快適な気候環境、心が元気で生き生きとした状態、健康的な栄養から生じます。一方、不快な気候、落ち込んだ精神状態、不健康な栄養は物質としての身体の中に重さ、硬さ、扱いが難しい状態を作り出します。アーカーサダートゥ(空間という要素)は、4つの原因(業、チッタ、温度、栄養)から生じる物質群の隙間に生じるため、4つの原因から派生的に生じるとみなされます。ラッカナルーパ(生起、存続、崩壊、無常)が四つのいずれも原因とならない理由については次の節で説明します。
第15節 まとめ
アッターラサ パンナラサ テーラサ ドゥヴァーダサー ティ チャ
カンマチットートゥカーハーラジャーニ ホーンティ ヤターカマン
ジャーヤマーナーディルーパーナン サヴァーヴァッター ヒ ケーヴァラン
ラッカナーニ ナ ジャーヤンティ ケーヒチー ティ パカースィタン
アヤン エッタ ルーパサムッターナナーヨー
18、15、13、12がそれぞれカンマ(業)、チッタ、ウトゥ(温度)、アーハーラ(栄養)から生じます。
(物質的現象の) ラッカナルーパ(生起、存続、崩壊、無常)が四つの様式のいずれも原因とならない理由は、ラッカナルーパ(生起、存続、崩壊、無常)に本来備わっている性質は物質が作られる特定の状態だけから成り立っているからです。
以上が物質の起源です。
第15節へのガイド
カンマ(業)から生じる18種類の物質とは、アヴィニッボーガルーパ(分けることが出来ない物質的現象)8種類、インドゥリヤルーパ(器官)8種類、ハダヤヴァットゥ(心臓という基盤)、アーカーサダートゥ(空間という要素)です。
チッタから生じる15種類とは、アヴィニッボーガルーパ(分けることが出来ない物質的現象)8種類、ヴィカーラルーパ(変わりやすい物質的現象)5種類(ヴィンニャーナッティ2種類とラフター、ムディター、カンマンニャター)、サッダ(音)、アーカーサダートゥ(空間という要素)です。
ウトゥ(温度)から生じる13種類とは、アヴィニッボーガルーパ(分けることが出来ない物質的現象)8種類、ラフター(軽さ)、ムディター、カンマンニャター、サッダ(音)、アーカーサダートゥ(空間という要素)です。
アーハーラ(栄養)から生じる12種類とは、アヴィニッボーガルーパ(分けることが出来ない物質的現象)8種類、ラフター(軽さ)、ムディター、カンマンニャター、アーカーサダートゥ(空間という要素)です。
28種類の物質的現象は原因の数によって分けることもできます。その場合は以下のようになります。
原因が1つ: インドゥリヤルーパ(器官)8種類、ハダヤヴァットゥ(心臓という基盤)、ヴィンニャーナッティ(暗示・ほのめかし)2種類の合計11種類。
原因が2つ:サッダ(音)の1種類。
原因が3つ: ラフター(軽さ)、ムディター、カンマンニャターの合計3種類。
原因が4つ: アヴィニッボーガルーパ(分けることが出来ない物質的現象)8種類とアーカーサダートゥ(空間という要素)の合計9種類。
物質的現象のグループ分け
第16節 簡略化した説明
エークッパーダー エーカニローダー エーカニッサヤー サハヴッティノー エーカヴィーサティ ルーパカラーパー ナーマ
物質的現象には、同時に現れ、同時に滅し、共通の土台を持ち、同時に起こるという点から、21のグループがあります。
第16節へのガイド
物質的現象は単独ではなく、複数の物質が組み合わさって、あるいはグループになって起こります。このグループはカラーパルーパと呼ばれ、21個あります。チェータスィカが全て4つの性質を持つ(第2章、第1節参照)のと同じように、物質的現象は全てが4つの共通する性質を持ちます。一つのグループに属する物質的現象は全て同時に現れ、同時に滅します。そして、派生する物質的現象及びお互い同士の直近の原因となる(地、水、火、風という)4つの支配的な要素を土台として共有します。また現れてから滅するまで一緒に起こります。
第17節 カンマ(業)から生じるグループ
タッタ ジーヴィタン アヴィニッボーガルーパン チャ チャックナー サハ
チャックダサカン ティ パヴッチャティ タター ソーターディーヒ サッディン
ソータダサカン ガーナダサカン ジヴァーダサカン カーヤダサカン
イッティバーヴァダサカン プンバーヴァダサカン ヴァットゥダサカン チャー ティ
ヤターッカマン ヨージェータッバン アヴィニッボーガルーパン エーヴァ
ジーヴィテーナ サハ ジーヴィタナヴァカン ティ パヴッチャティ イメー ナヴァ
カンマサムッターナカラーパ
ジーヴィタ(命)、アヴィニッボーガルーパ(分けることが出来ない物質的現象)8種類、チャック(眼)の合わせて10種類が、チャックダサカ(眼に関連する10種類)と呼ばれます。同様に、ジーヴィタ(命)、アヴィニッボーガルーパ(分けることが出来ない物質的現象)8種類とソータ(耳)の合わせて10種類が、ソータダサカ(耳に関連する10種類)と呼ばれます。ガーナダサカ(鼻に関連する10種類)、ジヴァーダサカ(舌に関連する10種類)、カーヤダサカ(身体に関連する10種類)、イティバーヴァダサカ(女性に関連する10種類)、プンバーヴァダサカ(男性に関連する10種類)、ヴァットゥダサカ(心臓という基盤に関連する10種類)も同じです。アヴィニッボーガルーパ(分けることが出来ない物質的現象)8種類とジーヴィタ(命)を合わせたものは、ジーヴィタナヴァカ(命の9)と呼ばれます。これらの9つのグループがカンマサムッターナカラーパ(業から生じる物質群)です。
第18節 チッタから生じるグループ
アヴィニッボーガルーパン パナ スッダッタカン タッド エーヴァ カーヤヴィンニャッティヤー サハ カーヤヴィンニャッティナヴァカン ヴァチーヴィンニャッティ
サッデーヒ サハ ヴァチーヴィンニャッティダサカン ラフターディーヒ サッディン
ラフターディエーカーダサカン
カーヤヴィンニャッティラフターディドゥヴァーダサカン
アヴィニッボーガルーパ(分けることが出来ない物質的現象)8種類はスッダッタカ(純粋な8)を構成します。アヴィニッボーガルーパ(分けることが出来ない物質的現象)8種類にカーヤヴィンニャーナッティ(身体による暗示・ほのめかし)が加わるとカーヤヴィンニャーナッティナヴァカ(身体による暗示・ほのめかしの9)となります。アヴィニッボーガルーパ(分けることが出来ない物質的現象)8種類にヴァチーヴィンニャーナッティ(言葉による暗示・ほのめかし)とサッダ(音)が加わるとヴァチーヴィンニャーナッティダサカン(言葉による暗示・ほのめかしの10)となります。アヴィニッボーガルーパ(分けることが出来ない物質的現象)8種類に軽さの3つの性質という物質的現象(ラフター=軽さ、ムドゥター=身体ないし心が柔軟になった状態、カンマンニャター=ブッダの教えを受け入れやすくなった状態)が加わると、ラフターディエーターダサカ(軽さの3つの性質の11)となります。アヴィニッボーガルーパ(分けることが出来ない物質的現象)8種類にカーヤヴィンニャッティ(身体による暗示・ほのめかし)と軽さの3つの性質(ラフター=軽さ、ムドゥター=身体ないし心が柔軟になった状態、カンマンニャター=ブッダの教えを受け入れやすくなった状態)が加わると、12となります。アヴィニッボーガルーパ(分けることが出来ない物質的現象)8種類にヴァチーヴィンニャーナッティ(言葉による暗示・ほのめかし)、サッダ(音)と軽さの3つの性質(ラフター=軽さ、ムドゥター=身体ないし心が柔軟になった状態、カンマンニャター=ブッダの教えを受け入れやすくなった状態)が加わると13になります。この6つの物質のグループはチッタから生じます。
第19節 ウトゥ(温度)から生じるグループ
スッダッタカン サッダナヴァカン ラフターディ エーカダサカン
サッダラフターディドゥヴァーダサカン チャー ティ チャッターロ
ウトゥサムッターナカラーパ
スッダッタカ(純粋な8)すなわちアヴィニッボーガルーパ(分けることが出来ない物質的現象)8種類、アヴィニッボーガルーパ(分けることが出来ない物質的現象)8種類にサッダ(音)が加わったサッダナヴァカ(音の9)、アヴィニッボーガルーパ(分けることが出来ない物質的現象)8種類に軽さの3つの性質という物質的現象(ラフター=軽さ、ムドゥター=身体ないし心が柔軟になった状態、カンマンニャター=ブッダの教えを受け入れやすくなった状態)が加わったラフターディエーカーダサカ(軽さの11)、アヴィニッボーガルーパ(分けることが出来ない物質的現象)8種類にサッダ(音)身体による暗示・ほのめかし)と軽さの3つの性質(ラフター=軽さ、ムドゥター=身体ないし心が柔軟になった状態、カンマンニャター=ブッダの教えを受け入れやすくなった状態)が加わった12、この4つの物質のグループはウトゥ(温度)から生じます。
第20節 アーハーラ(栄養)から生じるグループ
スッダッタカン ラフターディエーカダサカン チャー ティ ドゥヴェー
アーハーラサムッターナカラーパ
スッダッタカ(純粋な8)すなわちアヴィニッボーガルーパ(分けることが出来ない物質的現象)8種類、アヴィニッボーガルーパ(分けることが出来ない物質的現象)8種類に軽さの3つの性質という物質的現象(ラフター=軽さ、ムドゥター=身体ないし心が柔軟になった状態、カンマンニャター=ブッダの教えを受け入れやすくなった状態)が加わった11、この2つの物質のグループはアーハーラ(栄養)から生じます。
第21節 内部と外部
タッタ スッダッタカン サッダナヴァカン チャー ティ ドゥヴェー
ウトゥサムッターナカラーパ バヒッダー ピ ラッバンティ アヴァセーナー
パナ サッベー ピ アッジャッティカン エーヴァ
ウトゥサムッターナカラーパ(温度から生じる物質のグループ)のうち、スッダッタカ(純粋な8)すなわちアヴィニッボーガルーパ(分けることが出来ない物質的現象)8種類、アヴィニッボーガルーパ(分けることが出来ない物質的現象)8種類にサッダ(音)が加わったサッダナヴァカ(音の9)の二つのグループは内部にも外部にも見られます。残りは全て例外なく内部にのみしか見られません。
第22節 まとめ
カンマチットートゥカーハーラサムッターナー ヤターッカマン ナヴァ チャ
チャトゥロー ドゥヴェー ティ カラーパー エーカヴィーサティ
カラーパーナン パリッチェーダラッカナッター ヴィッチャッカナー ナ
カラーパンガン イッチャーフ アーカーサン ラッカナーニ チャ
アヤン エッタ カラーパヨージャナー
物質のグループは21あります。内訳は9つ、6つ、4つ、2つで、それぞれカンマ(業)、チッタ、ウトゥ(温度)、アーハーラ(栄養)から生じます。
アーカーサ(空間)は限界を定めるものであり、ラッカナ(特徴)はただ示すだけのものであるため 、この二つは物質グループの構成要素ではありません。
以上が物質のグループ分けです。
第22節へのガイド
カンマ(業)から作られる9つのグループは(1) チャックダサカ(眼に関連する10種類)、(2)ソータダサカ(耳に関連する10種類)、(3)ガーナダサカ(鼻に関連する10種類)、(4)ジヴァーダサカ(舌に関連する10種類)、(5)カーヤダサカ(身体に関連する10種類)、(6)イティバーヴァダサカ(女性に関連する10種類)、(7)プンバーヴァダサカ(男性に関連する10種類)、(8)ヴァットゥダサカ(心臓という基盤に関連する10種類)、(9)ジーヴィタナヴァカ(命の9)です。
チッタから作られる6つのグループは(1) スッダッタカ(純粋な8)、(2) カーヤヴィンニャーナッティダサカ(身体による暗示・ほのめかしの10)、(3) ヴァチーヴィンニャーナッティダサカ(言葉による暗示・ほのめかしの10)、(4)ラフターディエーカーダサカ(軽さの3つの性質の11)、(5)アヴィニッボーガルーパ(分けることが出来ない物質的現象)8種類にカーヤヴィンニャッティ(身体による暗示・ほのめかし)と軽さの3つの性質(ラフター=軽さ、ムドゥター=身体ないし心が柔軟になった状態、カンマンニャター=ブッダの教えを受け入れやすくなった状態)が加わった12、(6)アヴィニッボーガルーパ(分けることが出来ない物質的現象)8種類にヴァチーヴィンニャーナッティ(言葉による暗示・ほのめかし)、サッダ(音)と軽さの3つの性質(ラフター=軽さ、ムドゥター=身体ないし心が柔軟になった状態、カンマンニャター=ブッダの教えを受け入れやすくなった状態)が加わった13、です。
ウトゥ(温度)から作られる4つのグループは(1) スッダッタカ(純粋な8)、(2)サッダナヴァカ(音の9)、(3)ラフターディエーカーダサカ(軽さの11)、(4)アヴィニッボーガルーパ(分けることが出来ない物質的現象)8種類にサッダ(音)身体による暗示・ほのめかし)と軽さの3つの性質(ラフター=軽さ、ムドゥター=身体ないし心が柔軟になった状態、カンマンニャター=ブッダの教えを受け入れやすくなった状態)が加わった12です。
アーハーラ(栄養)から作られる二つのグループは(1)スッダッタカ(純粋な8)、アヴィニッボーガルーパ(分けることが出来ない物質的現象)8種類に軽さの3つの性質という物質的現象(ラフター=軽さ、ムドゥター=身体ないし心が柔軟になった状態、カンマンニャター=ブッダの教えを受け入れやすくなった状態)が加わった11、です。
ルーパッパヴァッティッカマ(物質敵現象の発生)
第23節 カーマーヴァチャラ(感覚的な楽しみを追い求める意識の領域)
サッバーニ パネーターニ ルーパーニ カーマローケー ヤターラハン アヌーナーニ
パヴァッティヤン ウパラッバンティ パティサンディヤン パナ サンセーダジャーナン
チェーヴァ オーパパーティカーナン チャ
チャックソータガーナジヴァーカーヤバーヴァヴァットゥドーサカサンカーターニ
サッタ ダサカーニ パートゥバヴァンティ ウッカッタヴァセーナ オマカヴァセーナ
パナ チャックソータガーナバーヴァダサカーニ カダーチ ピ ナ ラッバンティ
タスマー テーサン ヴァセーナ カラーパハーニ ヴェーディタッバー
これらの物質的現象は全て、状況に応じて、カーマーヴァチャラ(感覚的な楽しみを追い求める意識の領域)における生存の期間中、欠けることなく得ることができます。しかしパティサンディ(再生)においては、じめじめしたところに生まれる生命、(出産などの過程を経ずにいきなり現れる生命の場合、最大で7つのグループ組み合わせしか生じません。チャックダサカ(眼の10)、ソータダサカン(耳の10)、ガーナダサカ(鼻の10)、ジヴァーダサカ(舌の10)、カーヤダサカ(身体の10)、バーヴァダサカ(性の10)、ヴァットゥダサカ(心臓という基盤の10)、の7つです。最も少ない場合はチャックダサカ(眼の10)、ソータダサカン(耳の10)、ガーナダサカ(鼻の10)、バーヴァダサカ(性の10)が得られないことが時々あります。物質のグループの欠損についてはこのようにりかいしてください。
ガッバセッヤカサッターナン パナ カーヤバーヴァヴァットゥダサカサンカーターニ
ティーニ ダサカーニ パートゥバヴァンティ タッター ピ バーヴァダサカン カダーチ
ナ ラッバティ タトー パラン パヴァッティカーレ カメーナ チャックダサカーディーニ
チャ パートゥバヴァンティ
子宮から生まれる生命については、(再生の際に)カーヤダサカ(身体の10)、バーヴァダサカ(性の10)、ヴァットゥダサカ(心臓という基盤の10)という10個の物質から成るグループ3つが生じます。ただし、バーヴァダサカ(性の10)が得られないことが時々あります。そして、この後の生存の過程で徐々にチャックダサカ(眼の10)などの物質のグループが生じていきます。
第23節へのガイド
この節では妊娠の瞬間とその後の生存において物質のグループが生じる様子を生存領域別に説明しています。ブッダによれば生命の誕生には4種類あるとされています。アンダジャ(卵から生まれる)、ジャラーブジャ(子宮から生まれる)、サンセーダジャ(じめじめしたところから生まれる)、オーパパーティカ(突然ぱっと現れる)です。サンセーダジャ(じめじめしたところから生まれる)には下等な動物が含まれます。オーパパーティカ(突然ぱっと現れる)は原則として目で見ることは出来ません。ペータ(餓鬼)とデーヴァ(天界の生命)は通常このタイプの誕生をします。本文に見られる「子宮から生まれる生命」は暗にアンダジャ(卵から生まれる)も含めています。
第24節 物質の連続的な発生
イッチェーヴァン パティサンディン ウパーダーヤ カンマサムッターナ ドゥティヤチッタン ウパーダーヤ チッタサムッターナ ティティカーラン ウパーダーヤ ウトゥサムッターナ オージャーパラナン ウパーダーヤ アーハーラサムッターナ チャー ティ
チャトゥサムッターナルーパカラーパサンタティ カーマローケー ディーパジャーラー
ヴィヤ ナディーソートー ヴィヤ チャ ヤーヴァターユカン アッボッチンナン
パヴァッティ
物質のグループは4通りの方法でその連続性を保ちます。カンマサムッターナ(業から生じる物質群)はパティサンディ(再生)の時点から、チッタサムッターナ(業から生じる物質群)はパティサンディ(再生)の次のチッタから、ウトゥサムッターナ(温度から生じる物質群)は(チッタの)存続の段階から、アーハーラサムッターナ(栄養から生じる物質群)は栄養素が身体に広がった時点から始まり、ランプの炎あるいは川の流れのようにカーマーヴァチャラ(感覚的な楽しみを追い求める意識の領域)の中で、絶えることなく死ぬまで続きます。
第25節 死ぬ時
マラナカーレー パナ チュティチットーパリ サッタラサマチッタッサ ティティカーラン
ウパーダーヤ カンマジャルーパーニ ナ ウパッジャティ プレータラン ウッパンナーニ
チャ カンマジャルーパーニ チュティチッタサマカーラン エーヴァ
パヴァッティトゥヴァー ニルッジャンティ タトー パラン
チッタジャーハーラジャルーパン チャ ヴォッチッジャティ タトー パラン
ウトゥサムッターナルーパパランパラー ヤーヴァ マタカレーバラサンカーター
パヴァッタッティ
しかし、死ぬ時には、チュティ(死ぬ)チッタに先行する(認識過程の)17番目のチッタの存続の段階以降カンマサムッターナルーパ(業から生じる物質的現象)は生じません。それよりも前に生じたカンマサムッターナルーパ(業から生じる物質的現象)は死の瞬間まで起こり続けそして停止します。その後、チッタサムッターナルーパ(心から生じる物質的現象)とアーハーラサムッターナルーパ(栄養から生じる物質的現象)が停止します。それ以降はウトゥサムッターナルーパ(温度から生じる物質的現象)が死体という形で続きます。
第26節 偈文
イッチェーヴァン マタサッターナン プナドゥ エーヴァ バヴァンターレ パティサンディン
ウパーダーヤ タター ルーパン パヴァッタティ
こうして、死んだ生命は次の生存において再びパティサンディ(再生)を開始点として、同じように物質的現象が生じます。
第27節 ルーパローカ(物質を対象にした禅定をえた人が再生する、微細な物質から成る生存領域)
ルーパローケー パナ ガーナジヴァーカーヤバーヴァダサカーニ チャ
アーハーラジャパカーニ チャ ナ ラッバンティ タスマー テーサン
チャックソータヴァットゥヴァセーナ ティニ ダサカーニ ジーヴィタナヴァカン
チャ ティ チャッターロー カンマサムッターナカラーパ パヴァッティヤン チットゥサムッターナー チャ ラッバンティ
ルーパローカ(物質を対象にした禅定をえた人が再生する、微細な物質から成る生存領域)ではガーナダサカ(鼻の10)、ジヴァーダサカ(舌の10)、カーヤダサカ(身体の10)、バーヴァダサカ(性の10)、そしてアーハーラジャカラーパ(栄養から作られる物質群)は生じません。そのため、この生存領域の生命には、パティサンディ(再生)の際に4つのカンマサムッターナカラーパ(業から作られる物質群)、すなわちチャックダサカ(眼の10)、ソータダサカ(耳の10)、ヴァットゥダサカ(心臓という基盤の10)、ジーヴィタナヴァカ(命の9)が生じます。生存期間中はチッタサムッターナ(心から生じるもの)、ウトゥサムッターナ(温度から生じるもの)が見られます。
第27節へのガイド
ルーパローカ(物質を対象にした禅定をえた人が再生する、微細な物質から成る生存領域)に住む生命には性の区別が無いため、2種類のバーヴァダサカ(性の10)はありません。彼らは鼻、舌、身体を持ってはいますが、形だけであり、感覚機能はありません。
第28節 アサンニャーサッタ
アサンニャーサッターナン パナ チャックソータガーナヴァットゥサッダーニ ピ ナ
ラッバンティ タター サッバーニ ピ チッタジャルーパーニ タスマー テーサン
パティサンディカーレー ジーヴィタナヴァカン エーヴァ パヴァッティヤン チャ
サッダヴァッジタン ウトゥサムッターナルーパン アティリッチャティ
アサンニャーサッタ(知覚のない生命)の場合はチャック(眼)、ソータ(耳)、ハダヤヴァットゥ(心臓という基盤)もありません。同じように、チッタサムッターナルーパ(チッタから生まれる物質)はありません。そのため、パティサンディ(再生)の瞬間にジーヴィタナヴァカ(命の9)のみが生じます。そして、生存期間中、音以外のウトゥサムッターナルーパ(温度から生じる物質的現象)が続きます。
第 29節 まとめ
イッチェーヴァン カーマルーパーサンニサンカーテース ティースー ターネース
パテサンディパヴァッテイヴァセーナ ドゥヴィダー ルーパッパヴァッティ ヴェーディタッバー
このように、カーマローカ(感覚的な楽しみを追い求める生存領域)、ルーパローカ(物質を対象にした禅定を得た人が再生する、微細な物質からなる生存領域)、アサンニャーサッタ(知覚のない生命)の三つについては物質的現象の生起はパティサンディ(再生)とパヴァッティ(生存期間中)の二通りです。
アッタヴィーサティ カーメース ホーンティ テーヴィーサ ルーピス
サッタラセーヴァサンニーナン アルーペー ナッティ キンチャー ピ
サッドー ヴィハーロー ジャラター マラナン チョーパパッティヤン
ナ ラッバンティ パヴァッテー トゥ ナ キンチ ピ ナ ラッバンティ
アヤン エッター ルーパッパヴァッティッカモー
カーマローカ(感覚的な楽しみを追い求める生存領域)には28種類の物質的現象があります。ルーパローカ(物質を対象にした禅定を得た人が再生する、微細な物質からなる生存領域)には23種類の物質的現象があります。アサンニャーサッタ(知覚のない生命)の場合は、物質的現象は17種類です。しかしアルーパローカ(物質でない物を対象にした禅定に達した人が再生する、物質の無い生存領域)には物質はありません。
妊娠の瞬間はサッダ(音)、ヴィカーラ(変わりやすさ)、ジャラー(衰退)、マラナ(死)はありません。生存期間中は得られない物質的現象はありません。
以上が、物質的現象が生起する手順です。
第30節 ニッバーナ(涅槃)
ニッバーナン パナ ロークッタラサンカータン チャトゥマッガニャーネーナ サッチカッターバン マッガパラーナン アーランバナブータン ヴァーナサンカーターヤ タンハーヤ
ニッカンタッター ニッバーナン ティ パヴッチャティ
ニッバーナはロークッタラ(道・果の智慧を得た聖者たちが経験する境地)という名称を持ち、四つのマッガ(道の智慧)によって悟ります。ニッバーナはマッガ(道の智慧)の対象になります。そして、タンハー(渇愛)から解き放たれるため、ニッバーナと呼ばれます。タンハー(渇愛)は生命に絡みついて輪廻に繋ぎ止めます。
第30節へのガイド
ニッバーナはロークッタラ(道・果の智慧を得た聖者たちが経験する境地)という名称を持ち:この章の最後を締めくくりとなる第30節はパラマッタダンマ(究極の真理)の4番目であるニッバーナ(涅槃)を簡潔に取り扱います。ニッバーナは一般によく知られているサンスクリット語のニルヴァーナに相当するパーリ語です。その語源は「吹き消されること」「火が消されること」という意味の動詞、ニッバーティです。ですから、ニッバーナはローバ(貪欲)、ドーサ(怒り)、モーハ(真理がわからず混乱した状態)という俗世間的な「火」を消すという意味を持ちます。しかし、パーリ聖典注釈書の著者たちはニッバーナを、タンハー(渇愛)というヴァーナ(絡みつくもの)が無くなること、あるいはそれから「解き放たれること(ニッカンタッタ)」として取り扱うことを好みます。この本文でも、そうした派生的な意味が提唱されています。何故なら、タンハー(渇愛)に絡めとられている限り生命は誕生と死の繰り返しであるサンサーラ(輪廻)から離れることが出来ないからです。しかし、全てのタンハー(渇愛)を取り除くことが出来れば、人はニッバーナ(涅槃)に達し、誕生と死の繰り返しから解放されるのです。
第31節 分析
タダ エータン サッバーヴァトー エーカヴィダン ピ
サウパーディセーサニッバーナダートゥ チャー ティ ドゥヴィダン ホーティ
カーラナパリヤーイェーナ タター スンニャタン アニミッタン アッパニヒタン
チャー ティ ティヴィダン ホーティ アーカーラベーデーナ
ニッバーナ(涅槃)はその本質からみれば一つだけです。しかし、パンチャカンダ(生命を構成する五つの塊)が残っているかいないかの観点からみれば二つになります。パンチャカンダ(生命を構成する五つの塊)が残っている(=生きている)アラハッタが経験するニッバーナダートゥ(涅槃の要素)と、パンチャカンダ(生命を構成する五つの塊)が残っていない(命をおえた)アラハッタが達するニッバーナダートゥ(涅槃の要素)の2種類です。またニッバーナ(涅槃)にはスンニャター(空虚である)、アニミッタ(兆候が無い)、アッパニヒタ(欲望が無い)という3つの異なる様相があります。
第31節へのガイド
ニッバーナ(涅槃)はその本質からみれば一つだけです: ニッバーナ(涅槃)は単一のパラマッタダンマ(究極の真理)であり、分けることはできません。ロークッタラ(涅槃を悟っていない普通の人たちの世界を超越した)であり、サバーヴァ(本質)は一つです。その本質とは、条件に基づいて成り立っている世界を完全に超越した、条件に左右されることのない、死のない状態です。しかしながらニッバーナ(涅槃)に達した人(アラハッタ)にパンチャカンダ(生命を構成する5つの塊)が残っているかいなかの観点から二つに分類されます。生存中のアラハッタが経験するニッバーナダートゥ(涅槃の要素)はサウパーディセーサ(パンチャカンダが残っている)と呼ばれます。何故なら、キレーサ(心の汚れ)が全て消し去られているけれども過去のウパーダーナ(執着)によって獲得したパンチャカンダは生きている限り残っているからです。アラハッタが死を迎えた際に達するニッバーナダートゥ(涅槃の要素)はアヌパーディセーサ(パンチャカンダが残っていない)と呼ばれます。何故なら、パンチャカンダは捨て去られ、再び得ることはないからです。注釈書ではこの二つのニッバーナダートゥ(涅槃の要素)はそれぞれ、キレーサ(心の汚れ)の滅尽(キレーサパリニッバーナ)、パンチャカンダの滅尽(カンダパリニッバーナ)とも呼ばれています。
またニッバーナ(涅槃)にはスンニャター(空虚である)、アニミッタ(兆候が無い)、アッパニヒタ(欲望が無い)という3つの異なる様相があります:ニッバーナ(涅槃)がスンニャター(空虚である)と呼ばれるのはローバ(欲)、ドーサ(怒り)、モーハ(真理がわからず混乱した状態)が無いため、そして条件に左右されるのもが何もないためです。アニミッタ(兆候が無い)とよばれるのは、ローバ(欲)などのニミッタ(兆候)が無い、そして条件に左右されるもののニミッタ(兆候)が全く無いためです。アッパニヒタ(欲望が無い)と呼ばれるのは、ローバ(欲)を求めることがないため、そしてタンハー(渇愛)による欲望の対象にならないためです。
第32節 まとめ
パダン アッチュタン アッチャンタン アサンカータン アヌッタラン
ニッバーナン イティ バーサンティ ヴァーナムッター マヘーサヨー
イティ チッタン チェータスィカン ルーパン ニッバーナン イッチャピ
パラマッタン パカーセーンティ チャトゥダー ヴァ タターガタ
タンハー(渇愛)から解放された偉大な観察者は宣言します。ニッバーナ(涅槃)は死が無く、終わりが無く、条件に左右されることが無い、比べられるものが無い、客観的な状態です。
以上のように、タターガタ(ブッダ)は四つのパラマッタダンマ(究極の真理)を示されました。
イティ アビダンマッタサンガへー ルーパサンガハヴィバーゴー ナーマ チャットー
パリッチェードー
これでアビダンマッタサンガハの第6章、ルーパサンガハヴィバーガ(物質についての概要)を終わります。