十二因縁・縁起

第二章

セクション、結合、要素、期間

この章は図を見ながらお読みください。

a.中心にアヴィッジャー(無明)とタンハー(渇愛)があります。これをルート(根本)と呼びます。
b.サッチャ(真理)はサムダヤサッチャ(集諦)とドゥッカサッチャ(苦諦)の二つです。これはヴァッタデーサナー(輪転の教説)なので残りの二つのサッチャ(真理)すなわちマッガサッチャ(道諦)、ニローダサッチャ(滅諦)はアヴィッジャー(無明)に覆い隠されています。
c.セクションは四つあります。(1)過去の因果関係の原因、(2)現在の因果関係の結果、(3)現在の因果関係の原因、(4)未来の因果関係の結果、です。
d.要素は20個あります。(1)過去の原因である要素、すなわちアヴィッジャー(無明)、サンカーラ(行)、タンハー(渇愛)、ウパーダーナ(取)、バヴァ(有)です。(2)現在の結果である要素、すなわちヴィンニャーナ(識)、ナーマルーパ(名色)、サラーヤタナ(六処)、パッサ(触)、ヴェーダナー(受)です。(3)現在の原因である要素、すなわちアヴィッジャー(無明)、サンカーラ(行)、タンハー(渇愛)、ウパーダーナ(取)、バヴァ(有)です。(4)未来の結果である要素、すなわちヴィンニャーナ(識)、ナーマルーパ(名色)、サラーヤタナ(六処)、パッサ(触)、ヴェーダナー(受)です。
e.連結は12個あります。アヴィッジャー(無明)、サンカーラ(行)、ヴィンニャーナ(識)、ナーマルーパ(名色)、サラーヤタナ(六処)、パッサ(触)、ヴェーダナー(受)タンハー(渇愛)、ウパーダーナ(取)、バヴァ(有)、ジャーティ(生)、ジャラー(老)、マラナ(死)です。
f.期間は過去、現在、未来の三つです。
g.ヴァッタ(輪転:回転)には三つあります。キレーサヴァッタ(煩悩輪転)、カンマヴァッタ(業輪転)、ヴィパーカヴァッタ(異塾輪転:原因が生じてから時間をおいて生じる輪転)です。
h.結合は三つです。(1)過去の原因と現在の結果、(2)現在の原因と現在の結果、(3)現在の原因と未来の結果です。

ブッダは因果法則に従ってしょうめつ生滅が次の生滅を生むことを観察し、カンダ(五蘊)の観点からパティッチャサムッパーダ(十二因縁:縁起)を説かれました。

故モゴクセヤドーはカンダ(蘊)を注意深く観察した後、付録の図を描かれました。修行者はこの図を見て、パティッチャサムッパーダ(十二因縁:縁起)が自分自身のカンダ(蘊)に他ならないこと、カンダ(蘊)は消滅のプロセスに過ぎないこと、消滅のプロセスは悲しみ、苦しみ以外の何物でもないこと、苦しみと悲しみはまさにドゥッカサッチャ(苦諦)であることが理解できると思います。カンダ(蘊)とはもともとこのようなものであり、洞察をもって理解し認識しなければなりません。理解と認識によってのみサッサタディッティ(常見)、ウッチェーダディッティ(断見)、サッカーヤディッティ(有身見)を取り除くことができるのです。ですから修行者はカンダ(蘊)が見せるもの、示すもの、意味するもの、知らせるものを是非理解するようにしてください。

以下は故モゴクセヤドー自身の詩を訳したものです。

アヴィッジャー(無明)とタンハー(渇愛)によってナーマルーパ(名色)が生じる。ウパーダーナ(取)とバヴァ(有)が原因となり、木から種から生じ種から木が生じる、まさにそのように、永遠に因果の流れが続く。ナーマルーパ(名色)が原因でカンマ(業)が生じる。この因果法則の真理は創造神や偉大な梵天が作り出したものではないことを智慧で理解し認識することができる。

もう一つの短い詩があります。

根本に二つ、サッチャ(真理)に二つ、
グループは四つ、
連結は十二、
輪転は三つでその結合も三つ、
期間は三つで二十の要素からなる。

ある時アーナンダ尊者はブッダに言いました。「私にはパティッチャサムッパーダ(十二因縁:縁起)の教義は深く深遠なものとは思えません」

ブッダは「パティッチャサムッパーダ(十二因縁:縁起)の教義は実に深く、見るからに深遠です」そして「そのように言ってはなりません」とアーナンダ尊者を三度諭しました。

ブッダはアーナンダに言いました「この教義を深く掘り下げる完璧な知識と智慧を欠いているがために生命はぐるぐるにまかれた糸のように、あるいはムンジャ草とイグサのように搦め捕られて悲惨な生存世界と輪廻、すなわち再生の繰り返しから逃れることができません。」

ですから雑用に煩わされることなくゆったりくつろげる時間があるなら、この教義を読み、学ぶことをお勧めします。そうすることで以下のような利得を得ることができます。

1、パティッチャサムッパーダ(十二因縁:縁起)の教義の主旨を完全に理解した修行者は生滅に対する洞察の智慧を得ることができます。カンダ(蘊)の生滅を因果法則に基づいて理解すれば虚無主義的な誤った見解(ウッチェーダディッテイ:断見)を取り除くことができます。そして古いカンダ(蘊)が生滅し、新しいカンダ(蘊)が生起するプロセスを因果法則に従って完璧に理解すれば、永遠に変わらないものがあるという誤った見解(サッサタディッティ:常見)を取り除くことができます。

生滅という現象は原因と結果に過ぎず、生命、男、女、自己というものは存在しないということを完璧に理解した熱心な修行者は、しばらくの間(タダンガパハーナ:彼分捨断)アッタ(自我)の厚いベール、あるいはサッカーヤディッティ(有身見)から解放されます。

2、因果法則の結果としての生滅のプロセスを理解すれば、パッチャヤーパリッガハニャーナ(因果法則の智慧:縁摂受智)を得ることができます。

3、アヴィッジャー(無明)、タンハー(渇愛)、サンカーラ(行)に依存して、あるいはこれらが原因となってパンチャカンダ(五蘊)が生じることを完璧に理解することができれば、修行者は三つの邪見、(1)イッサラニンマーナディッティ(自在化作見)、(2)アキリヤディッティ(無作見)、(3)アヘートゥカディッティ(無因見)を追い払うことができます。

4、パティッチャサムッパーダ(十二因縁:縁起)の教義を正しく理解すれば、五蘊は身体と心の現象、すなわちルーパ(色)、ヴェーダナー(受)、サンニャー(想)、サンカーラ(行)、ヴィンニャーナ(識)の絶え間無い生滅の過程に過ぎないと悟ることができます。そして最後にはパンチャカンダ(五蘊)は悲しみと苦しみの大きな固まりにすぎないという洞察を得る可能性があります。

上記の四つのポイントを完璧に理解した修行者はアパーヤガーティ(悲惨な生存世界)へ落ちる危険から一時的に(タダンガパハーナ:彼分捨断)逃れることができます。

熱心な修行者は実際の瞑想に着手する前にこの教義を完全に理解することを強くお勧めします。そうすることで、修行者のサッダー(信)、パンニャー(智慧)、ヴィリヤ(精進)の程度に応じて、聖者の第一段階から第四段階の果を得ることができるのです。

<脚注>
(1)イッサラニンマーナディッティ(自在化作見):宇宙は超越的な存在が創造したという誤った考え。
(2)アキリヤディッティ(無作見):徳のある行為をしても、あるいは徳のない行為をしてもそれによる利得も損失もないという誤った考え。
(3)アヘートゥカディッティ(無因見):結果には原因はないという誤った考え。全ての事物は原因無く生じると考える。原因を認めない邪見。

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