十二因縁・縁起

用語集

1、 パンチャカンダ
五蘊(五つの塊)-ルーパ(色)、ヴェーダナー(受)、サンニャー(想)、サンカーラ(行)、ヴィンニャーナ(識)

(a) ルーパカンダ(色蘊)
四つの基本要素(四大要素)
パタヴィ(地):柔らかさと硬さの要素
アーポー(水):結合の要素
ヴァーヨー(風):動きの要素
テージョ-(火):熱と運動エネルギーの要素とそれに由来する特質

(b) ヴェーダナーカンダ(受蘊)
スカ(楽受):心地よい感受
ドゥッカ(苦受):不快な、不満足な感受
ウペッカー(不苦不楽受):楽でも苦でもない感受

(c) サンニャーカンダ(想蘊)
ルーパサンニャー(色想):形の知覚
サッダサンニャー(声想):音の知覚
ガンダサンニャー(香想):匂いの知覚
ラササンニャー(味想):味の知覚
ポッタバサンニャー(触想):身体の接触の知覚
ダンマサンニャー(法想):精神対象の知覚

(d) サンカーラカンダ(行蘊)
精神形成、意思形成:ヴェーダナー(受)とサンニャー(想)を除く50のチェータシカ(心処)すべて

(e) ヴィンニャーナカンダ(識蘊)
チャックヴィンニャーナ(眼識)
ソータヴィンニャーナ(耳識)
ガーナヴィンニャーナ(鼻識)
ジヴァーヴィンニャーナ(舌識)
カーヤヴィンニャーナ(身識)
マノーヴィンニャーナ(意識)
(チッタとマノーは同意語です)

2、
(a)アーヤタナ(基本感覚要素):内部の基本要素
チャッカーヤタナ(眼)
ソーターヤタナ(耳)
ガーナーヤタナ(鼻)
ジヴァーヤタナ(舌)
カーヤータナ(身体)
マナーヤタナ(心)
これらは六つの内部アーヤタナと呼ばれます。
(b)外部のアーヤタナ(基本感覚要素):外部の基本要素
ルーパーヤタナ(見える形)
サッダーヤタナ(音)
ガンダーヤタナ(匂い)
ラサーヤタナ(味)
ポッタバーヤタナ(触覚)
ダンマーヤタナ(五十二の心処、十六の微小なルーパ(感覚物質)、涅槃、概念)

3、四つのアーリヤサッチャ(聖なる真理)
1.ドゥッカサッチャ(苦諦):苦しみの真理
八十九のローキヤチッタ(世間心)、ローバチェータシカ(貪心処)を除く五十一のチェータシカ(心処、精神要素)
2.サムダヤサッチャ(集諦):苦しみの原因についての真理
ローバチェータシカ(貪心処)
3.二ローダサッチャ(滅諦):苦しみの滅尽の真理
4.マッガサッチャ(道諦):苦しみの滅尽にいたる方法の真理

4、四つのアーサワ(漏:汚れ)
カーマーサワ(欲漏):ローバ(貪:貪欲、渇望)
バヴァーサワ(有漏):来世でより高い生存世界に生まれたいという熱望
ディッターサワ(見漏):正しくない、倒錯した見解
アヴィッジャーサワ(無明漏):アーリヤサッチャ(聖諦)に対する無知

5、オグハ(暴流)
カーモーグハ(欲流):ローバ(貪:貪欲、渇望)の暴流
バヴォーグハ(有流):来世でより高い生存世界に生まれたいという暴流
ディットーグハ(見流):正しくない、倒錯した見解、すなわちアッタディッティ(我見)、サッサタディッティ(常見)、ウッチェーダディッテイ(断見)など61個のディッティ(見)の暴流
アヴィッジョーグハ(無明流):四つの聖なる真理に対する無知の暴流

6.ウパーダーナ(取):執着
カームパーダーナ(欲取):官能的快楽への執着
ディットゥパーダーナ(見取):正しくない、倒錯した見解への執着

7.シーラバトゥパーダーナ(戒禁取)
正しくない戒律、修行への執着

8.アッタヴァードゥパーダーナ(我取)
自己や自我があるという理論への執着

9.ニーヴァラナ(蓋:障害)
カーマッチャンダ ニーヴァラナ(欲貪蓋):官能的快楽という障害
ヴャーパーダ ニーヴァラナ(瞋恚蓋):悪意や憎悪という障害
ティーナミッダ ニーヴァラナ(昏沈睡眠蓋):怠惰と惰眠という障害
ウッダッチャクックッチャ ニーヴァラナ(掉挙後悔蓋):散乱と後悔という障害
アヴィッジャー ニーヴァラナ(無明蓋):聖なる真理に対する無知という障害

10.七つのアヌサヤ(随眠煩悩):潜伏する邪悪
カーマラーガヌサヤ(欲貪随眠):官能的快楽
バヴァラーガーヌサヤ(有貪随眠):来世でも生存したいという欲望
パティガーヌサヤ(瞋恚随眠):ドーサ(瞋);憎悪、怒り
マーナーヌサヤ(慢随眠):自尊心、自慢
ディッターヌサヤ(見随眠):正しくない、倒錯した見解
ヴィチキッチャーヌサヤ(疑随眠):疑い、優柔不断
アヴィッジャーヌサヤ(無明随眠):聖なる真理に対する無知

11.十のサンヨージャナ(結縛):軛
カーマラーガサンヨージャナ:欲貪結縛
ルーパラーガサンヨージャナ:色貪結縛
アルーパラーガサンヨージャナ:無色貪結縛
サッカーヤディッティサンヨージャナ:有身見結縛
パティガサンヨージャナ:瞋恚結縛
マーナサンヨージャナ:慢結縛
シーラッバタパラーマーササンヨージャナ:戒禁取結縛
ヴィチキッチャーサンヨージャナ:疑結縛
ウッダッチャサンヨージャナ:掉挙結縛
アヴィッジャーサンヨージャナ:無明結縛

12.十のキレーサ(煩悩):不純
ローバ(貪):貪欲、渇望
ドーサ(瞋):憎悪、悪意
モーハ(痴):妄想
マーナ(慢):自慢
ディッティ(見):正しくない、倒錯した見解
ヴィチキッチャー(疑):疑い、優柔不断
ティーナミッダ(昏沈睡眠):怠惰、惰眠
ウッダッチャ(掉挙):心の散乱
アヒリカ(無慚):悪事を恥ずかしいと思わない
アノッタッパ(無愧):良心がない、悪事を恐れない

13.三十七のボディパッキヤダンマ(三十七菩提分法):悟りの要素
四つのサティパッターナ(四念処):気づきの土台
四つのサンマパダーナ(四正勤):正しい努力
四つのイディパーダ(四神足):成就の方法
五つのインドゥリヤ(五根):能力
五つのバラ(五力):力
七つのボッジャンガ(七覚支):悟りの構成要素
八つのマッガンガ(八正道):道の構成要素

14.四つのアディパティ(増上):力の優れた要素
チャンダーディパティ(欲増上):力の優れた願望ないし意欲
ヴィリヤーディパティ(精進増上):力の優れた努力
チッターディパティ(心増上):力の優れた意識
ヴィーマムサーディパティ(観増上):力の優れた探究

15.四つのアーハーラ(食、滋養):食物
カバリンカーハーラ(段食):食べ物という栄養
パッサーハーラ(触食):接触という栄養
マノーサンチェータナーハーラ(意思食):意思という栄養
ヴィンヤニャーナーハーラ(識食):意識という栄養

16.気づきの四つの土台
カーヤーヌパッサナー サティパッターナ(身随観念住):身体に対する気づき
ヴェーダナーヌパッサナー(受随観):感受に対する気づき
チッターヌパッサナー(心随観):意識、精神に対する気づき
ダンマーヌパッサナー(法随観):ダンマ(法)ないしサッチャ(真理)に対する気づき
ここで使うダンマ(法)はニーヴァラナ(蓋:禅定を妨げる障害)、カンダ(蘊:心と体の集合)、アーヤタナ(処:感覚器官)、ボッジャンガ(覚支:悟りの要素)、サッチャ(真理)という複数の意味を含みます。

17.八つのマッガンガ(道支):聖なる道の構成要素
サンマーディッティ(正見):正しい見解
サンマーサンカッパ(正思惟):正しい思考
サンマーヴァーチャー(正語):正しい言葉
サンマーカンマンタ(正業):正しい行為
サンマーアージーヴァ(正命):正しい生計
サンマーヴァーヤーマ(正精進):正しい努力
サンマーサティ(正念):正しい気づき
サンマーサマーディ(正定);正しい集中

18.五つのサンマーディッティ(正見):正しい見解
カンマサッカターサンマーディッティ(業自性正見):「自分の捲いた種は自分で刈り取る」という正しい見解。実際は仏教徒がいだく理念はこれよりもずっと高尚です
ヴィパッサナーサンマーディッティ(ヴィパッサナー正見):五蘊の生滅を対象に瞑想することで得られる正しい見解
マッガサンマーディッティ(道正見):道(苦しみを滅尽する道)を悟ることにより得られる正しい見解
パラサンマーディッティ(果正見):果(修行の成果)により得られる正しい見解
パッチャヴェッカナサンマーディッティ(観察正見):熟考により得られる正しい見解

19.三つのサンカーラ(行):行為
カーヤサンカーラ(身行):身体の行為
ヴァチーサンカーラ(語行):口の行為
チッタサンカーラ(心行):心の行為

20.三つのサンカーラ(行):行動
プンニャービサンカーラ(現福行):徳のある行動、健全な行動
アプンニャービサンカーラ(非福行):徳のない行動、不健全な行動
アーナンジャービサンカーラ(不動行):四無色界の禅定により安定した心の状態

21.四つのサンカーラ(行):ヴィシュディマッガ(清浄道)
サンカタサンカーラ(有意行):アニッチャーヴァタサンカーラ(一切の行は無常である)で説明されているように因果法則で生じる一切のもの
アビサンカタサンカーラ(行作せられた行):業の力により三つの生存世界(欲界、色界、無色界)に生じる全てのルーパ(色)とナーマ(名)
アビサンカーラナカサンカーラ(行作する行):三つの生存世界(欲界、色界、無色界)において生じる二十九のクサラチェータナー(善思)とアクサラチェータナー(悪思)
パヨーガービサンカーラ(加行の行):精神的、身体的な努力

22.ソーターパンナ(預流者)になるための四つの条件(四増長法)
1.サップリササンセーヴァ(善士親近):智慧あり法を実践する人に親しみ近づくこと
2.ダンマサヴァナ(正法聴聞):聖者の説教を聞くこと
3.ヨニソマナシカーラ(如理作意):真理に適った行動
4.ダンマーヌダンマパティパッティ(法随法行):八正道を歩んで悟りを得るために実践すること

23.サッカーヤディッティ(有身見):利己的な誤った見解

24.サッサタディッティ(常見):永遠なものがあるという誤った見解

25.ウッチェーダディッティ(断見):虚無主義的な誤った考え

26.キレーサヴァッタ(煩悩輪転):情動の回転

27.カンマヴァッタ(業輪転):カンマ(業)の回転

28.ヴィパーカヴァッタ(異熟輪転):結果としての影響の回転
ヴィンニャーナ(識):再生の意識
ナーマルーパ(名識):心と身体
サラーヤタナ(六処):六つの感覚要素
パッサ(触):接触
ヴェーダナー(受):感受
ジャーティ(生):誕生
ウパパッティバヴァ(起有):再生の結果生じた存在(九つの生存世界)
カーマバヴァ(欲有)、ルーパバヴァ(色有)、アルーパバヴァ(無色有)、サンニバヴァ(有想有)、アサンニバヴァ(無想有)、ネーヴァサンニナーサンニバヴァ(非想非非想有)、エーカヴォーハーラバヴァ(一蘊有)、チャトゥヴォーカーラ(四蘊有)、パンチャヴォーカーラバヴァ(五蘊有)
ジャラーマラナ(老死):老化と死

29.ヨニソマナシカーラ(如理作意):真理に対する正しい態度

30.アヨニソマナシカーラ(非如理作意):真理に対する誤った態度

31.ヤターブータニャーナ(如実知見智):物事をありのままに観察することで得られる智慧

32.ニャータパリンニャー(知遍知):ダンマ(法)を聞くことによって得られる正しい知識

33.ティラナパリンニャー(分析遍知):アニッチャ(無常)、アナッター(無我)、ドゥッカ(苦)を対象に瞑想することで得られる正しい知識

34.パハーナパリンニャー(断遍知):悟りの段階に応じて、キレーサ(煩悩)、アヌサヤ(随眠煩悩)、サンヨージャナ(結縛)を根絶やしにすることで得られる正しい知識

35.アヌサヤ(随眠煩悩):潜伏する気質
カーマラーガヌサヤ(欲貪随眠):官能的快楽
バヴァラーガーヌサヤ(有貪随眠):来世でも生存したいという欲望
パティガーヌサヤ(瞋恚随眠):ドーサ(瞋)-憎悪、怒り
マーナーヌサヤ(慢随眠):自尊心、自慢
ディッターヌサヤ(見随眠):正しくない、倒錯した見解
ヴィチキッチャーヌサヤ(疑随眠):疑い、優柔不断
アヴィッジャーヌサヤ(無明随眠):聖なる真理に対する無知

36.クサラカンマ(善業):健全な行為

37.アクサラカンマ(不善業):不健全な行為

38.カーヤカンマ(身業):身体の行為

39.ヴァチーカンマ(語業):口の行為

40.マノーカンマ(意業):心の行為

41.ローバ(貪):貪欲、渇望

42.ドーサ(瞋):怒、憎悪

43.モーハ(痴):妄想

44.マーナ(慢):自惚れ

-十二因縁・縁起